2016年 U20 夏休みセミナー 開催の報告

2016年 U20 夏休みセミナー 開催の報告

毎年恒例になっている「U20 夏休みセミナー」を7月28日(木)に開催致しました.本セミナーは、カリエスフリーを目指してメインテナンスを続けている子どもたちに対して、「身の回りのカリオロジー」という観点から、毎年テーマを決めて、学んでもらうことを目的としています。

さて、今年は「夏休みの自由研究はこれで決まり!みんなの飲み物大丈夫?」という表題で、60分のセミナーを企画しました.対象は小学3・4年生、約30人の子どもたちがお家の方と一緒に参加してくれました。

セミナーの内容としては、まず簡単にむし歯の成り立ちについておさらいをした後、日頃私たちが飲んでいるさまざまな飲み物が、お口の中の環境にどのように影響するのか説明を受けました.飲み物がむし歯の発症や進行に影響する因子は2つ.一つはむし歯原因菌のエサになり、歯を溶かす「酸」の原料となる「糖」の含有量.もう一つは飲み物そのものが持つ「酸」の強さです。

子どもたちには日頃自分たちが飲んでいる飲み物を持参してもらい、診療所で用意をした数種類の飲み物も含めて、飲み物の酸性度をリトマス試験紙で測る簡単な実験をしてもらいました.また、それぞれの飲み物については、あらかじめ「糖」の含有量を計算して提示しておきました。

子どもたちは酸性度をあらわすpH (ペーハー)という言葉も学び、pHの数値が小さいほど「酸」の力が強いことも理解してもらいました.そして、縦軸に酸性度、横軸に糖分量を示したグラフ上に、計測したpHと計算された糖分量が交わる位置に印を記入してもらいました。

その結果から、飲み物は大きくと3つのグループに分けることができました.一つ目のグループは、酸性度が弱くかつ糖の含有量が少なく歯を溶かす力のほとんどない「安心グループ」(Aグループ).二つ目のグループは酸性度が強くかつ糖の含有量も多い「歯を溶かす力の強いグループ」(Cグループ).三つ目のグループはその中間のグループ(Bグループ)です.こうして分類したそれぞれのグループの飲み物に対して日常的にどのような付き合い方をしたらよいのかを子どもたちと一緒に考えてまとめてみました

<飲み物を安心して飲むためのお約束>

①Aグループ 糖や酸をほとんど含まず、生活のどのような場面でも、時間や場所を選ばずに飲んでいい飲み物です.   就寝前や、歯磨きの後で飲んでもかまいません.回数も無制限です。

②Bグループ 糖を含み、また酸も含んでいる飲み物のグループです.むし歯の進行に影響しないようにするためには、飲み方に工夫が必要です。
・一度に飲む量を多くしない
・飲む回数は一日1〜2回
・夜寝る前には飲まない

③Cグループ 糖を多く含み、加えて酸性度も高いためにむし歯のリスクの高い飲み物のグループです.飲み方に注意が必要です。
・日常的な飲料としない
・楽しい行事やパーティーなど限定に
・特別なときのお楽しみ

お店には数えきれない程の種類の飲み物がたくさんならんでいます.たくさんの飲み物から気に入るものを選ぶことは楽しいことです.でもその時、その飲料を飲む場面や自分の健康を考えて適切に選択する力を子どもたちに身につけてほしいと思います.目新しさや美味しさだけに惑わされずに、それぞれの飲み物の性質をよく知り、飲む場面や自分のリスクに合わせて賢く選択する力をしっかり育てたいと願っています。

今回の実験では、熱中症対策をうたって売られているフレーバーのついた飲料水(見た目はほとんど水と同じ)の多くに、思った以上の糖や酸が含まれていることが分かりました.部活動でも多く使用されているスポーツ飲料も含めて、その摂取にあたっては正しい認識が必要と思われます

日吉歯科診療所では、むし歯予防のための食生活指導において、糖濃度の多少によって単純に飲んでよいとか悪いとかを押し付ける様なことはありません.子どもたちには大人の意見を素直に聞いて従うことを求めるのではなく、物事を論理的に考え、それを手がかりに自分の健康を守るために自分で考え実行できる力を求めたいと思います.自立した大人の要件に、自身の健康を自身で守る力は必須です.小さい頃からそのような力を育てることを目標に、子どもたちと関わって行きたいと思っています。

今年もたくさんの子どもたちに参加していただき、夏休みセミナーも無事終了しました.こうした経験をきっかけに、自分のよい歯に関心を持ち、その価値を知って大切にする気持ちを育ててもらえると嬉しいです.来年もまた違う企画で開催を予定したいと思いますので、ご参加ください。

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