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お口ケアと健康

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歯科は予防のため通う

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定期的なメンテナンスを受けていますか?

 口の中の定期点検とクリーニングというメンテナンスのために、歯科医に通う人が増えてきた。長年、虫歯や歯周病など、何か問題が起きた時に受診する人が多かったが、歯を守っていくためには、それだけでは不十分だという認識が広がっている。とはいえ、まだ、習慣にしていない人も少なくないので、歯科メンテナンスの意義をおさらいしておきたい。

治療で歯を失い続けてきた日本人

 歯に問題が起きてから歯科に行くのは、歯を失う道と言わざるを得ない。小さな虫歯なら、ちょっと削って詰める。深く進んでいたら、神経まで取ってクラウンをかぶせる。治療した詰め物、かぶせ物の寿命を調べた岡山大学の森田学教授(予防歯科学)の研究がある。平均すると、イラストのように10年もたない。詰めた物が外れる、かぶせたクラウンの下が虫歯になる、根の下に病変ができるといったトラブルが発生するからだ。この研究は10年余り前のもので、その後材料や接着剤などが改良され、もっともつようになった可能性はあるが、治療をすれば大丈夫というわけではない点に変わりはない。

 虫歯をつくるミュータンス菌や歯周病菌は、口の中で容易に増殖する。歯磨きやフロス(糸ようじ)、歯間ブラシで細菌や食べカスを取り除いても、取りきれない細菌が残る。また、歯は熱いもの、冷たいものという温度差にさらされ、食べ物をかむときに圧力が加わる。厳しい口内環境の中で、詰め物やかぶせ物と歯の間に隙間ができたり、これらの人工物が外れたり、傷んだりする。二次的な虫歯で再治療になれば、さらに歯は削られて小さくなる。神経を抜いた歯はもろくなる。歯の喪失に一歩ずつ近づいていく。こうした悪循環に陥らないため、日ごろのセルフケアや定期的な歯科メンテナンスが重要なのだ。

虫歯治療後の詰め物、かぶせ物の寿命(岡山大学・森田学教授)

虫歯治療後の詰め物、かぶせ物の寿命(岡山大学・森田学教授)

スウェーデンでは8020を達成

 日本人の多くが長年、「治療→再治療→歯の喪失」というサイクルを経験してきた。歯は上下合わせて28本あるが、厚生労働省の歯科疾患実態調査(2011年)によると、失った歯の本数は、50歳代前半の平均で2.6本、60歳代前半で5.9本、70歳代前半で11.0本になる。80歳の時に20本の自分の歯を残そうと、日本歯科医師会や厚労省は「8020」運動を主唱しているが、達成しているのはほぼ4割。80歳で残っている歯は平均で半数の14本だ。一方で、世界には「8020」を達成している国もある。歯科衛生の先進国と言われるスウェーデンだ。この差はなぜ生まれたのだろう。

 スウェーデンの予防歯科で知られる歯科医、アンダース・スコグルンドさんによると、1960年代末に歯科衛生士の教育が始まり、予防処置が行われるようになった。21歳以下は無料で歯科医療を受けることができ、幼いころからメンテナンスが習慣になっているという。22歳になると、メンテナンスに1回1万5000円程度かかるが、スコグルンドさんがいるカールスタッド市では、市民の9割が継続しているそうだ。治療費が日本の自己負担分と比べてかなり高いこともあって、予防重視の姿勢が徹底されている。それが残る歯の多さにつながっている。

国際標準の予防歯科を目指し診療所開設

日吉歯科診療所汐留でも、メンテナンスを担うのは歯科衛生士。熊谷直大院長(右)は経験豊富なベテランを酒田から連れてきた

日吉歯科診療所汐留でも、メンテナンスを担うのは歯科衛生士。熊谷直大院長(右)は経験豊富なベテランを酒田から連れてきた

 そんなスウェーデンに負けない予防歯科医療を実現しようと、昨年3月、東京港区に一軒の歯科診療所が生まれた。「日吉歯科診療所汐留」院長の熊谷直大なおたさん(37)は、「メンテナンスをしていれば、ほとんどの人が歯を失わないで済む。治療と違ってメンテナンスの後は、爽快感があって気持ちがいいので、頭を切り替えていただければ、もっと普及する」と意欲的に取り組んでいる。

 初診では、口腔内の写真や歯のエックス線写真を撮影し、歯周ポケットの深さや歯茎の出血、唾液に含まれる細菌、唾液の量の検査をして、口の中の状態を把握する。ほとんどの初診患者が虫歯や歯周病を持っているので、治療をしてからメンテナンスに移る。メンテナンスの頻度は3か月に1度。担当の歯科衛生士が1時間かけて、口内のチェックとクリーニング、歯を強くする高濃度フッ素の塗布、生活習慣や全身の状態の確認をし、記録とアドバイスをまとめる。画像やコメントは、インターネットで確認することができる。

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